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第10回 第4項 座標変換には丹念な事前調査が必要

筆者がお客さんと接していて感じることは、新測量法の試行に伴って技術的混乱が予想されることです。当初、測地成果2000の座標変換など経費もかからず極めて簡単に処理できる、と言われてきましたので、まだ多くの方々が簡単に問題を考えています。ところが筆者の現場を歩いた実感によれば、事はそれほど単純でないことがだんだん深刻に感じられるようになりました。

 


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上図のように、国家基準点A,B,Cがあります。新しくa,b,cの公共基準点を設ける場合、国家基準点Bが思わしくないとき、そのB点を無視して国家基準点A及びB点を既知点として測量し、新点a,b,cの位置を決めます。現在使われている基準点の位置の不整合が大きい場合、いかにして「無視」する基準点を早く探し当てるかが、測量効率を高める最大の問題です。こうした処理は、特別な場合でなく一般的なものとも聞いています。


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国土地理院提供の座標変換プログラム「TKY2JGD」による国家基準点の座標変換パラメータが、AA’,BB’,CC’とします。国家基準点Bを無視したA及びCの座標変換パラメータによる黒矢印の先端a’,b’,c’の位置が最も正確な新しい位置です。しかし、国土地理院提供の座標変換を機械的に適用すると、B点を無視しないで赤矢印のBB’のパラメータが影響し、赤矢印の先端a”,b”,c”が座標変換された位置になります。この場合敢えて言えば、結果的に「誤った」座標変換が行われてしまう理屈になります。
正確な座標変換を行うためには、過去の観測網図などを丹念に調べて仕事をしなければなりません。大変手間のかかる仕事ですが、骨格になる1、2級基準点の座標変換は点数が少ないのでどうにでも処理できます。3、4級基準点や境界点など膨大な数を正確に処理する問題があります。まだこうした処理が関係者の間に十分認識されているとは限りません。むしろ、座標変換処理を極めて安易に考えているのが一般的のように思えます。
事前調査に関しては、本講座第2回で述べました。ご参照下さい。

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