連載

第3回 第2項 21世紀の測量業、ゼネコン依存から情報産業へ

20世紀の測量業は、道路や橋の建設に伴って仕事がつくられてきました。測量業の受注金額は、建設業の1%程度といわれ、ゼネコンに寄生して生きてきたといってもよさそうです。

一方、地籍測量は国家の根幹をなすものですが、その予算は年間200億円余りで、50年経過してもその進捗率は40%程度です。この年間額をそのまま50年間に延長しても、その総額は1兆円余りです。東京湾横断道路の総工費1兆4千億円余りに比較してみれば、ゼネコンの道路1本にも満たない額で、測量業の主体性の欠如が分かります。私が技術協力で仕事をしていたアフリカのケニアでは、測量局の仕事の8割りが地籍測量です。こうした途上国より日本の地籍は遅れていると言えます。結果として、東大教授の村井先生が指摘している”地積後進国日本”ということになります。


私は新市場の開拓を勧めます。何と言っても地籍後進国の日本で、唯一希望の持てるのは地籍の大事業化です。経団連の提言にも書いてあるように、世界中でこれほど遅れている国は日本以外にない。・・・・・・・・
(村井俊治,APA,No74,1999,7頁)

03-02-1

東京湾横断道路 (株式会社トライ ホームページより)


碓井先生の講演によれば、20世紀の測量業が道路や橋の建設に付随したものから、21世紀の測量業がGISと結びついたものになり、本質的に変化すると述べられていました。GISの本質は、道路、住所、などなどあらゆる地物などが位置情報と結びついたものになっていることです。あらゆる地物が、時空間的な情報と結びついてきます。21世紀の測量成果は、単なるゼネコンのためばかりでなく、それらは自動的にGISのデータとして、情報の社会基盤の骨格をつくります。例えば、リアルタイムのGIS情報は、防災における住民の生命財産を守る重要なものになります。
このように、20世紀におけるゼネコン依存の測量業は、21世紀には空間データ基盤という情報基盤の骨格をつくる情報通信産業の測量業へと本質的に変化していくのではないでしょうか。その根幹をなすものが、世界測地系座標で記述された正確な位置情報を与える「測地成果2000」の事業であると思います。従いまして、測地成果2000構築にしっかり取り組んだところが、21世紀の発展の基礎つくりに成功するものといえます。すでに「豊中方式」などと呼ばれているように、大阪の豊中市(人口約40万人)は数億円の経費をかけて公共基準点を整備し、それに基づいてGISを発展させて住民サービスを効率的に行ってきています。

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