災害復興技術情報

熊本地震に伴う公共測量等について

 

熊本地震による被害が長引く中、このたび発生した熊本県を中心とする地震により亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げるとともに、被災された皆さまには、心からお見舞い申し上げます。

弊社では、早い復興を期待して、測量の手順を解説したいと思います。

余震等もある程度落ち着き日常生活が戻るに従い、地震で移動した境界等の復元などが課題となります。地震発生から2か月程を経ると相談が増えはじめると聞いております。

 国土地理院は、平成28年(2016年)熊本地震に伴い、2016年4月15日から基準点成果公表を停止しています。これは、地震活動に伴う大きな地殻変動の影響により、地震発生地域およびその周辺地域に既設の基準点(基本基準点、公共基準点)も影響を受けているためです。しかし、被災状況の把握や復旧・復興のためには、早急に公共測量等を実施することが必要となります。

 国土地理院では、下記の公共測量成果改定のフロー(予定)をウェブサイトに公開しています。

 

公共測量成果改定のフロー

図1.公共測量成果改定のフロー(予定) 出典:国土地理院ウェブサイト http://psgsv2.gsi.go.jp/koukyou/public/kumamoto/kumamotojishin.html

 

 公共測量を実施する場合、図1のフローを参考にして行うわけですが、電子基準点、三角点の成果改定前に実施するか後に実施するかによって対応が異なります。改定前に実施する場合は、測量実施後に再計算を行う必要があります。

 公共測量作業規程の準則に規定されている「電子基準点のみを既知点とした基準点測量」は、電子基準点の成果の公表が停止されている現在でも観測データは引き続き提供されているので、観測はできますが、点検計算及び平均計算については、電子基準点の成果が改定されてから実施する必要があります。やむを得ず緊急に成果を必要とする場合は、地震の影響ができるだけ少ない電子基準点を既知点として使用します。電子基準点の変動については、国土地理院のウェブサイト内の「電子基準点が捉えた変動図」を参考にします。また、電子基準点のみを既知点とした基準点測量では路線長の制限はありませんが、路線長の最長は60kmまでとし、1級GNSS受信機により5時間以上の観測を実施するようにします。その根拠は「GNSSによる標高の測量マニュアル」によります。

また、公共基準点を既知点として使用する際には、以下の点に注意が必要です。

1.公共基準点の成果が国家基準点と同様に使用や成果の公表が停止されている場合があります。

2.公共基準点を使用する場合は、当該公共基準点に異常がないか確認を行い使用します。異常が見られた場合には、管理者に報告し、対応を相談します。

3.公共基準点の成果は、今後改定される可能性がありますので、現在の測量成果を使用して公共測量を実施した場合は、成果の改定後に網平均計算等の計算処理を行う必要があります。また、パラメータ補正等で対処できない所が存在する場合もあり、対応が困難となり再測が必要となる場合もあります。

実際に公共測量を実施される場合には、国土地理院の公共測量の相談窓口へ相談される事をお勧めします。

復旧測量等位置情報に関するご質問がございましたら、ご遠慮なく、弊社ウェブサイトへお問合せください。

                                                                                                      2016年5月6日

                          文責(技術顧問 丹羽)

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