座標系講座 生活編

第2回 地理空間情報活用推進基本法等衛星測位関連法

衛星測位及び地上の位置に関する法律は、先述の測量法以外に、次のものがあります。地理空間情報活用推進基本法、国土調査法及び不動産登記法です。以下、これらの法律と衛星測位との関係を考察します。

 

1. 地理空間情報活用推進基本法(平成19年5月30日法律第63号)

本法律は、地理空間情報の活用の推進に関する施策を総合的かつ計画的に推進すること及び我が国独自の準天頂衛星による衛星測位システムの推進が目的です。本法律第二条は、次にように、(X,Y,Z,t)の4次元の位置情報を定義しています。

 

この法律において「地理空間情報」とは、第一号の情報又は同号及び第二号の情報からなる情報をいう。

 

空間上の特定の地点又は区域の位置を示す情報(当該情報に係る時点に関する情報を含む。以下「位置情報」という。)
前号の情報に関連付けられた情報

 

平成20年4月の「第1次地理空間情報活用推進基本計画」は、“測量の基準点は、基盤地図情報の骨格をなすものであるが、日本列島では地殻変動による位置精度の劣化が懸念される。このため、国土地理院は、基準点測量を計画的に実施するとともに、セミ・ダイナミック補正(基準点測量の結果から地殻変動の影響を取り除く方法)を導入して、国家基準点体系の維持、確かな位置情報の提供を図る。” と定めました。この決定に基づいて、国土地理院は、かねてから検討していたセミ・ダイナミック補正を2010年に導入しました。

 

【注】測量法は、位置の時間変化に関しては、同法第31条に定められた(測量成果の修正)です。測量法には、定常的な地殻変動に対応する法律的根拠は定められてなく、定常的な地殻変動に関する法律的根拠は、地理空間情報活用推進基本法に委ねられることになります。

 

地理空間情報活用推進基本計画は、平成19年に制定された地理空間情報活用推進基本法に基づき、翌年4月には第1期の、平成24年3月には第2期の地理空間情報活用推進基本計画(以下「基本計画」という。)を策定し、平成29年3月には第3期の基本計画を策定してきています。こうした基本計画の中で平成30年度における4機体制の運用及び平成35年度を目途とした7機体制の確立が決定されているところです。

 

2. 国土調査法(昭和26年法律第180号)

国土調査法は、国土の開発及び保全並びにその利用の高度化に資するとともに、あわせて地籍の明確化を図るため、国土の実態を科学的且つ総合的に調査することを目的とするものです(第1条)。

1951(昭和26)年に開始された調査は、65年を経過した2016(平成28)年度末において、平均52%の進捗率です。特に、都市部の進捗率は24%及び林地は45%と調査が進んでいません。地籍調査事業の遅れの最大の原因は、日本における測量・地図事業が軍用目的に行われたためでしょう。本格的な地籍調査は、昭和26年の国土調査法成立から始まりました。また、各1都2府47県の地籍調査担当部署は、6割が農林部などで担当し、この地籍調査事業が農業政策として実施されていることも、都市部での進行を妨げているのでしょう。

地籍調査の成果は、測量法第11条の測量の基準に基づいて作成された地籍図です。準天頂衛星は、高層ビル地帯の都市部や林地での活躍が期待でき、地籍調査へのその活用が有力です。また、地籍測量は、基準点測量と細部測量で構成されていますが、精密単独測位が本格化すれば、基準点測量は省略でき、細部測量のみで成果が得られます。

 

3. 不動産登記法(平成16年法律第123号)

不動産登記法は、“不動産の表示及び不動産に関する権利を公示するための登記に関する制度について定めることにより、国民の権利の保全を図り、もって取引の安全と円滑に資することを目的とする。”ことを目的としています。

不動産登記法に基づく地図は、不動産登記法「第14条第1項地図」及び「同第4項地図」並びに不動産登記令第2条に定められた「地積測量図」があります。

 

3.1  不動産登記法第14条地図

地籍調査の成果は、地籍図として、実施地方自治体及び法務省の登記所に保管されています(図 1)。地籍図は、法務省に送られ、不動産登記法第14条第1項地図として備え付けられています。その数は、登記所備付図面708万枚の約55%になります。図1に示す地図に準ずる図面(法第14条第4項地図、約45%)は、測量法の測量の基準に基づく位置が決められていない位置の不正確な地図です。

 

 

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図1 全国の登記所備え付け図面

平成30年地積問題研究会第21回定期研究会配布資料

 

 

3.2  地積測量図

不動産登記令(平成16年12月1日政令第379号)第2条に定められた“一筆の土地の地積に関する測量の結果を明らかにする図面”である地積測量図は、不動産登記規則(平成17年法務省令第18号)第77条によって、その作成が定められています。不動産登記規則第10条第3項は、測量法に基づく「基本三角点等」に基づいて地積測量図の座標化を定めています。基本三角点等が存在しない地域において、準天頂衛星測位に基づいた座標観測により、地積測量図の座標化が容易になります。ちなみに、地籍調査における年間の認証筆数は約70万に対して、地積測量図の扱う認証筆数は約200万です。衛星測位の活用による地積測量図の座標化は、遅れている地籍調査への支援にもなるでしょう。

 

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