空間データの品質向上

第5回 交差の自動修正(5)

実証実験

これまで申し上げたコンセプトに基づき交差の自動修正のツールを作成し、いくつかの実際のデータを使ってテストを行った。その結果について報告する。


1.実証例1


実証例1は、A市のご協力を得て、X作業機関から図化データを借用してテストを行った。この作業機関は、図化の段階で空間属性の面と線を指定して取得している。そこで、借用した全市の編集前データから無作為に4図郭を抽出した。このデータは、品質検査を行った結果では、地物総数は、89,617で、はみ出し幅0.01M以上の面交差881地物、線交差182地物があった。その内訳は、はみ出し幅が0.5M以上の面交差201地物、線交差61地物で、はみ出し幅0.5M以下の面交差668地物、線交差121地物であった。
そこで、自動修正は、はみ出し幅0.5M以下の交差に対して自動修正を行った。その結果を表1に示す。

表1 自動修正の改善率

項目 種類 修正前 修正後 改善率
地物総数 89,617 89,617
はみ出し幅0.01m以上の地物数 面交差 881 213 75.8%
線交差 182 68 62.6%
はみ出し幅0.5m以上の地物数 面交差 201 201 0.0%
線交差 61 61 0.0%
はみ出し0.5m以下の地物数 面交差 680 12 98.2%
線交差 121 7 94.2%


自動修正を行ったはみ出し幅0.5M以下の面交差の改善率((修正前-修正後)/ 修正後×100)は、98.2%、線交差の改善率は94.2%であることがわかる。その結果、全体に占める改善率は、面交差で75.8%,線交差で62.6%改善されたことがわかる。
はみ出し幅0.5M以下の面交差の地物別改善率を表2に、はみ出し幅0.5M以下の線交差の地物別改善率を表3に示す。なお、面交差は空間属性が面と面の地物が交差している場合を分類し、線交差は空間属性が線と線、線と面の地物が交差している場合を分類している。

表2 面交差の地物別改善率

地物 総数 修正前 修正後 改善率
プラットホーム 4 1 0 100.0%
建物 19,688 172 1 99.4%
湖池 37 1 0 100.0%
植生と場地 6,874 359 7 98.1%
石段 209 4 0 100.0%
道路縁(大) 715 147 4 97.3%
合計 27,527 684 12 98.2%


表3 線交差の地物別改善率

地物 総数 修正前 修正後 改善率
さく 656 14 1 92.9%
へい 492 8 2 75.0%
河川 1,748 53 0 100.0%
記号道路 548 5 1 80.0%
建物 19,688 25 3 88.0%
石段 209 6 0 100.0%
道路縁(大) 715 9 0 100.0%
合計 24,056 120 7 94.2%


図1は建物とさくが交差している。建物とさくが交差した場合、建物が優先されるので、交差後建物の外周をなぞることになるが、補正によってはみ出し幅が最大の建物のコーナーまでさくが移動していることがわかる。
また、道路縁と建物の交差では、建物が道路縁に移動していることがわかる。

 20121121_01図1 修正された面交差例


今回の検証は、はみ出し幅が0.5M以上の場合は、修正内容に修正する閾値を0.5Mとしている。図2は河川とさくが交差しているが、はみ出し幅が0.5M以上なので修正していない。また、道路縁内に植生界がn点までがはみ出し幅0.5M以内のはみ出しであるが、n+1および、n+2点目のはみ出し幅が0.5M以上であるため、修正されない例である。

20121121_02


図2 はみ出し幅が閾値0.5M以上のため修正されない例


修正できなかった交差の原因は、表4、表5の通りであった。

表4 面交差の未処理原因

内容 植生 道路縁 建物 合計
マルチパート 5 3 1 9
始点が領域内に存在 2 1 0 3
合計 7 4 1 12


表5 線交差の未処理原因

内容 記号道路 建物 さく へい 合計
マルチパート 1 1 0 0 2
始点が同一線上 0 2 1 2 5
合計 1 3 1 2 7


未処理の原因でマルチパートは、このツールに組み込んでいないため、未処理となっている。今後、開発する予定である。また、始点が同一線上にある場合は、判別式を変更すれば処置できるので、今後は修正できる。
このデータの自動修正の箇所数と処理時間を表6に示す。
また、使用したコンピュータはDell PRECISION 470で演算速度3.00GHz、メモリー3GBで処理した。

表6 処理時間

図郭番号 処理箇所数 処理時間
図郭1 833 46分01秒
図郭2 3,524 1時間10分06秒
図郭3 492 20分30秒
図郭4 558 30分30秒
平均 1,351.75 41分53秒



2.実証例2


実証例1は、B市のご協力を得て、Y作業機関から図化データを借用してテストを行った。
この作業機関は、図化の段階で空間属性を線のみで取得している。そこで、借用した全市の編集前データから無作為に4図郭を抽出した。但しこのデータは地形図の更新なので、更新したデータのみである。
このデータの品質検査を行った結果では、地物総数は、48,256で、はみ出し幅0.01M以上の線交差864地物があった。その内訳は、はみ出し幅が0.5M以上の線交差27地物で、はみ出し幅0.5M以下の線交差837地物であった。
そこで、自動修正は、はみ出し幅0.5M以下の交差に対して自動修正を行った。その結果を表7に示す。

表7 自動修正の改善率

項目 種類 修正前 修正後 改善率
地物総数 48,256 48,256
全体のエラー数(0.01m以上) 線交差 864 48 94.4%
0.5m以上のエラー数 線交差 27 27 0.0%
0.5m以下のエラー数 線交差 837 21 97.5%


自動修正を行ったはみ出し幅0.5M以下の線交差の改善率((修正前-修正後)/ 修正後×100)は、97.5%、であることがわかる。その結果、全体に占める改善率は、94.4%改善されたことがわかる。
はみ出し幅0.5M以下の線交差の地物別改善率を表8に示す。

表8 地物別改善率

要素 総数 修正前 修正後 改善率
さく 1,420 35 4 88.6%
へい 34 2 2 0.0%
記号道路 266 8 2 75.0%
建物 7,277 71 5 93.0%
植生と場地 15,021 84 1 98.8%
石段 28 1 0 100.0%
道路縁(大) 3,371 202 2 99.0%
道路縁(中) 6,081 36 5 86.1%
分離帯 1,376 398 0 100.0%
合計 27,417 837 21 97.5%


へいの修正ができないのは道路縁と建物が同一線上にあり、現在のロジックでは、へいを更にその上に重ねることができないため未修正となっている。今後、改善する余地がある。しかし、おおむね目標とした修正ができている。

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