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第8回 第4項 「地籍GIS」というけれど・・・

 前述の国際地籍シンポジュウムのなかで、地籍情報と地理情報システム(GIS)との関連の議論もなされています。地籍情報をGISデータとして取り込む話は、今に始まったことでなく、いろいろなところで議論されてきています。人によっては「地籍GIS」などの造語を使う方もおります。

 問題は、現在の地籍測量で定められた精度のままで、21世紀のGISデータとして使えるか、という問題です。平板測量を用いた図解法による成果は、ディジタル化しても21世紀のGISデータとしては、ほとんど利用価値がないのではないか、という疑問が生じてきます。例えば、地籍測量における山林及び原野地域の筆界点の公差は、次のように定められています。

筆界点間距離 10m 公差 0.640m
20m 1.126m
40m 1.385m
筆界点の位置の誤差 公差 3m


 現在、地球上任意の2点間における位置関係は、人手の指がもつ爪の面積範囲程度の正確さで決めることが可能な時代です。上のような規程に基づいてつくられた図が、ディジタル化されたからといって21世紀の「地籍GIS」データとして活用できるのでしょうか。
 福永宗雄著による「17条地図活用マニュアル」(日本加除出版)によれば、トータルステーションによる一筆地調査が開始されたのは1985年頃からで、費用がかかるが正確である、と記されています。
 測量の正確さと密接に関係しているものが、測量単価です。地域によっても異なるようですが、地籍測量の単価は、公共測量単価の数分の1と言われています。現在の地籍測量の評価基準は進捗率です。もし、測量精度を上げれば大幅に進捗率が遅れる可能性があります。進捗率だけでなく、21世紀に耐えられるデータ取得の意味も考える時期にきているのではないでしょうか。
 測地成果2000計画は、こうした問題提起にもなってきています。つまり、測地成果2000の実現により、各基準点座標の不整合が解消される可能性が高まりました。その結果、国家基準点はより正確なものになり、地籍測量の規程だけでなく様々な測量作業規程が、より正確なものに改定されるように迫られてきているのではないでしょうか。どんな理由があるにせよ、筆界点座標誤差の公差が3mも許されているようでは、それは21世紀の測量ではないと断言できます。私も含め関係者の規程改定の努力が求められています。

 

 

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