連載

第6回 第3項 座標系の混乱

既に述べましたように、GPS測量の基線解析では、±10m程度の地球上の位置が必要になります。そのために公共測量では「WGS84」が使われています。基線解析が終われば、WGS84座標は一切無関係なものになります。公共測量作業規程では、基線解析結果の座標差である「基線ベクトル」(x,y,z)は何らの座標変換なしに、そのまま日本の座標系で扱います。

基線ベクトルはWGS84座標系で扱わなければならないもの、と勘違いしている例が時々みられます。三角点の経緯度座標を「TKY2WGS」で座標変換し、得られたWGS84座標を使って網平均計算を行うように考えている方もみかけられます。くどいようですが、「TKY2WGS」は基線解析に使う大雑把なWGS84座標を得るためのものです。別な言葉で言えば、日本の現行座標とWGS84座標との正確な座標変換プログラムは存在しません。

06-03-1

 
「GPS測量」イコール「WGS84」と思い込んでいる例が数多く見られます。基線解析目的で新たな座標系が入り込んできたため、混乱しているのです。GPS測量では何が何でも「WGS84」を使わなければ気が済まないといった言葉・文書などがしばしば見受けられます。
ある事例では「ITRF/GRS80」としていました。どうもおかしいので筆者が追求したところ「WGS84」座標系が使われていました。「ITRF」を「WGS84」に座標変換していたのです。全く不必要な余分な座標変換の計算をしていました。

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