連載
第10回 第3項 位置を表す約束事(座標系)
2001年03月15日
多くのお客さんや測量関係者と接触していますと、技術的につまずくところに共通したものがあることに気づきます。その一つが「座標系」に関することです。必ずしも認知された内容ではありませんが、座標系に関しては10及び第6回の本講座でとりあげました。
多くの方々にみられる一番のつまずきは、「座標系」と「地球楕円体」の区別がついていないことです。例えば、「日本測地系」を「ベッセル」、「測地成果2000」を「GRS80」と呼ぶ方をかなり多く見受けます。これは誤りと言うべきでしょう。
上図に示された長田町1丁目2番地の加藤さん宅の右上境界点Pは、客観的に存在します。そのP点の位置を約束に基づいて記述します。この例の場合、
- 原点Oを町会の境界中央に選ぶ。
- X軸を1丁目1番地と1丁目2番地の道路の中心方向に選ぶ。
- Y軸は原点OでX軸と直交するように選ぶ。
原点Oと座標軸X及びYがこの座標系の枠(フレ-ム)になります。この約束事(座標系)により、P点の位置を記述すれば、X軸方向の長さ 30.615m、Y軸方向の長 9.981mの交点として、(30.615,9.981)で表す数値の組をP点の「座標」ということにします。この座標系は、長田町1丁目という狭い地域だけを対象とした「任意座標系」です。平面直角座標系なので、地球楕円体は一切無関係です。
測地成果2000における座標系は、地球重心を原点とした「3次元直角座標系」です。この座標では直感的に位置が分かりにくいので、GRS80という地球楕円体を3次元座標系に組みあわせて、緯度・経度の座標で地球上の位置を記述します。客観的に存在する位置を記述する約束事が、難しく言うと「座標系」です。緯度・経度を使う場合は地球楕円体が必要になります。
以上、測量の基礎知識充実のための一例として「座標系」のお話をしました。「座標変換」又は「ジオイド」などに関する基礎知識の充実も望まれます。