座標系講座 生活編
第5回 まとめ
2020年03月16日
平成29年第3期地理空間情報活用推進基本計画によれば、平成30年度より我が国の準天頂衛星4機体制を確立し、衛星測位サービス、サブメータ級測位補強サービス等を開始します。更に、平成35年度を目途とする持続測位が可能な7機体制の構築に向けた取り組みが行われています。こうした衛星測位の高精度化及び高度化に伴って、国民は正確な位置情報を得ることができます。しかし、これらの正確な位置情報は、測量法上の位置ではなく、地上における国民生活上の位置情報としては、測量法及び測量作業規程の整備が要求されてきていることは、既に述べてきたところです。以下にそれらの整備に関する内容を列挙します。
1. フレームの統一
日本の測地座標系(フレーム)は、西日本及び北海道はITRF94(元期1997.0)及び2011年東北地方太平洋沖地震地域はITRF2008(元期2011.4)の2つによって構成されています(連載第1回 図16)。従いまして、これら二つの境界付近での処理が複雑になっています(連載第1回 8.フレーム境界における座標の不整合参照)。統一したフレームの構築は、衛星測位をより効果的なものにするためにも、早期の実現が望まれます。
2. 4次元の位置情報
第3期地理空間情報活用推進基本計画は、“全国の電子基準点による地殻変動の即時把握の技術開発”が定められています。現在の測量法は、定常的な地殻変動のような時間変化に対応した規定は存在しません。地理空間情報活用推進基本法と同様に、位置情報として4次元対応の法律的根拠が必要になります。技術的には、リアルタイム変動に対応可能な当社が開発した「セミ・ダイナミック リダクション」の活用があります。
3. 2+1次元処理から3次元処理への移行
衛星測位の高度化に伴って既に述べたような測量法の整備が必要になります。更に、現在の測量法は、水平位置と高さは別々な処理となっています。測地学でいう「2+1次元」で3次元処理ではありません。具体的には、日本経緯度原点の測地原子として楕円体高を加えることです。また、トータルステーションにより得られた3次元データは、わざわざ平面と高さに分離し、手間のかかる計算精度の落ちる処理をしています。3次元データは、素直に3次元処理を行うような測量作業規程の改善が求められています。
4. 相対測位から絶対測位への対応
標観測が中心になり、あらゆる位置測量は、座標観測を中心とした細部測量へと移り代わることになります。こうした技術の進歩に見合った測量作業規程の改正が必要になって来るので、測量関係者はその取り組みを行う必要があります。
5. GRS80楕円体の物理定数の規定
以上考察してきましたように、測量法施行令に楕円体高の規定を行うこと及び水準測量と衛星測位から得られる2種類の標高の統一があります。加えて、現在の標高計算にあたって、高さを決めるとき用いる正標高補正及び正規正標高補正の根拠となるGRS80楕円体の物理定数である地心引力定数及び地球の自転角速度の規定が必要になります。